この記事では、帝王切開での出産に伴う傷についてまとめました。
どのような過程で治癒するのか、自宅でのセルフケアの方法を解説しています。
帝王切開の傷【傷の治癒過程】
帝王切開の傷は赤ちゃんを出産した愛の勲章ですが、ちょっと厄介な傷でもあります。
産後にケロイドになったり、痒みやじわじわと痛んだり、いつ治るの?きれいになるの?と
不安を抱えるママも多いかと思います。
少し掘り下げて帝王切開による傷についてみてみましょう!
おなかの傷には2種類ある
帝王切開の術式によって傷のパターンは2種類あります。
- 縦切開
- 横切開
①縦切開
手術の際に視野を確保しやしく赤ちゃんを取り出しやすいことから選ばれる方法で、
傷の大きさは4~13㎝前後のことが多いです。
②横切開
下着のゴムより下を横に切開することで、産後に傷が目立ちにくいとされていますが、
中の子宮の切開方法は基本的に縦切開と同じです。
傷の大きは10~15㎝前後のことが多いです。
傷の治癒過程
縫合した帝王切開の傷は2日ほどで新しい皮膚ができ始め、3日程度で閉じていきます。
人間の自然治癒力には驚かされます。
とは言っても見てわかる傷は3日で閉じても、皮膚の下は炎症が続いており痛みが生じます。
皮膚の下の組織も傷が閉じてくると、傷を埋めようと細胞が増殖期を迎え、この時に痒みが
増えてきます。この増殖期は3週間~1か月続くと言われ、その後少しずつ肌の色に
近くなっていくとされています。
この増殖期と言われる新しい細胞が活発に生まれる時期に、体質や衣服の擦れによる刺激を受けると
肥厚性瘢痕やケロイドになる要因に繋がり、炎症が継続し、赤く盛り上がった目立つ傷跡になる
可能性があります。肥厚性瘢痕は2~5年をかけて肌の色に近い状態になることもありますが、
ケロイドは自然に治ることが少ないと言われています。
・肥厚性瘢痕(元の傷に沿って皮膚の盛り上がりや赤み、痒みを生じる状態)
・ケロイド(元の傷の範囲を超えて赤み、盛り上がりが広がり、痛みや痒みが生じる状態)
帝王切開の傷【効果的なセルフケア方法】
傷跡が肥厚性瘢痕やケロイドになる要因には体質と物理的刺激があります。
女性ホルモンの影響や高血圧、遺伝的要因、糖尿病など体質によるものは予防が難しいですが、
物理的刺激からはセルフケアで予防することが可能です。
目立たない傷跡にするには、とくに傷跡に対しての伸展刺激は要注意!
皮膚が引っ張られる刺激を受けないよう保護する必要があります。
目立たない傷跡にするためのセルフケア方法は以下です。
- 傷跡専用テープを貼る
- 腹帯で傷を固定する
- 術後半年ほどは傷跡に負担がかからないよう激しい運動は避ける
- 紫外線対策を行う
- 乾燥を予防する
目立たない傷にするためには最低でも3か月は傷のケアを行うことが理想とされています。
傷跡専用テープを貼る、腹帯で傷を固定する
傷が完全に閉じ、抜糸やステープラー、皮膚接合用テープ、皮膚用接着剤などが外れ、傷に対する処置が済んでから
傷跡専用テープを使うことができます。
よく医療ドラマで患者さんの術後の創部をピンセットとイソジンで消毒し、ガーゼで覆うシーンがありますが
現在はそのようなことはしないことが一般的です。なぜなら浸潤療法といって傷を密閉し、乾燥を防ぐことで
治癒を促す考えがスタンダードだからです。この浸潤療法でイメージしやすいのがキズパワーパッドです!
絆創膏で収まるようなかすり傷から術後の創部まで、傷は乾燥させずに治すのが今の医学的思考です。
このキズパワーパッドのような傷跡専用テープの目的は、傷を外から感染させない、過剰な浸出液や出血を吸収する、
傷の治癒環境を良好に保つことです。
一見膿んだように見える黄色~透明の浸出液は、この中に皮膚の細胞を生成するのに必要な成分が含まれており
むやみに拭き取ってはもったいないのです。治すための成分を含む浸出液で常に傷を潤し保護することで
皮膚の組織がスムーズに再生され、治癒が早くなります。
ただ浸出液が汚かったり、臭いがしたり、痛みがある場合は本当に膿んでいる場合もありますので、
産後退院前に看護師や助産師に、注意事項を確認しておくと安心です。
傷が閉じると浸出液はでなくなり、外からの感染リスクもぐんと下がりますので、傷跡専用テープで保護する必要性は
なくなり、何も施さずフリーな状態にして良いのですが、衣服の擦れなどによる外的刺激から傷跡を守る目的で
継続して使用することをおすすめします。
これに加えて腹帯を巻いて傷が動かないよう固定するとさらに外的刺激からは守れるのですが、暑いし痒いしと
ストレスを感じるママは多いです。
帝王切開が予定されているママは、入院バッグに傷跡専用テープを入れて
病室に持って行っといてもええな!
術後半年ほどは傷跡に負担がかからないよう激しい運動は避ける
傷のある下腹部は、日常動作で力を入れることが多く、それによって皮膚や筋肉が引っ張られて
肥厚性瘢痕、ケロイドになりやすい傾向があるといわれています。
そのため術後半年ほどは傷やその周囲の組織が過度に刺激を受けないようケアが必要です。
紫外線対策を行う、乾燥を予防する
紫外線は傷跡が黒ずむ原因になります。また肌の痒みを誘発する乾燥も注意しましょう。
帝王切開の傷【医療的アプローチ】
術後1年が過ぎても傷跡が赤い、傷跡が硬い、傷跡が盛り上がっているという場合は一度専門医に相談しましょう。
肥厚性瘢痕やケロイドは形成外科や皮膚科で治療することができます。
縦切りの場合3人に1人のママが、横切りの場合6人に1人のママが肥厚性瘢痕またはケロイドを経験すると
言われています。見た目だけでなく痒みや痛みも辛いので、可能な限り綺麗に治すのが良いでしょう。
治療内容としては、ステロイドの投与やステロイドのテープ剤の処方、切除術、レーザー治療、放射線治療など
様々な方法があり、授乳を継続しながら治療を受けることも可能な場合があります。
セルフケアだけでは満足な結果にならない、産後1年にもなるのに地味にチリチリと痛む・痒みがあるなど
少しでも不快な症状がある場合は、ぜひ受診し相談してみてください。
日常動作で傷周りの筋肉や皮膚は動きまくり!
セルフケアにも限界があるよなぁ~
帝王切開の傷【心にも残った傷】
帝王切開の傷跡は時に愛の勲章と呼ばれますが、そうだとわかっていても、予期せぬ緊急帝王切開や若年出産、
帝王切開に対して不安が大きかったママなど、その背景によってはすぐに勲章だと思えない、受け入れられない
ことがあります。周囲からの心無い言葉や、理想の出産ができなかったと心に傷を負ってしまうママも
少なくありません。
自分のボディーイメージと傷跡のあるお腹、痒みや痛み、赤ちゃんのお世話をするときも
傷跡を気にかけるストレスなど、心の傷をそのままにしておくと今後の育児にも影響を及ぼしかねません。
病院や産院によっては帝王切開を受けたママに対しサポートを行い、経験者同士で気持ちを共有し合う
場を設けたりときめ細かいフォローを行っているところもあります。
自治体の保健師、助産師、看護師を頼ってみたり、子どもの健診の際に相談してもいいので、
誰かに聞いてもらう、頼ることができると良いですね。
「帝王切開だからどうのこうの」という世間の説にとらわれないでほしいと願っています。
気持ちの問題は理論や理屈でどないかなるもんちゃうからな~
心がついていかないことは十分理解できるで!周りを頼ってや~☆
おかんが看護学生、看護師時代に経験した話で、
帝王切開で出産されたママたちから「陣痛を経験していなくてもママになれるかな」
「帝王切開でごめんね」「下から産んでないからな~」という言葉を耳にしました。
この言葉たちを聞くとショックで、悔しくて、たまらない気持ちになりました。
手術をするということは、ママにもリスクは生じます。かけがえのないわが子のために手術台にあがる強さ、
私は尊敬しかありません。
赤ちゃんのために、赤ちゃんと自分の命を守るために帝王切開を頑張ったことに誇りを持ち、ママ自身も周りも
もっとママを「赤ちゃんのためにありがとう」と称え、褒めて欲しいです。
帝王切開は立派なお産です。命がけで産んだ、生まれたことに方法は関係ありません。
これから自信をもって育児ができることを応援しています。
帝王切開の傷【まとめ】
日本では約5人に1人のママが帝王切開で出産されているようです。
帝王切開による傷跡が肌の色に近くなるまでに3か月~1年はかかるといわれており、
傷跡が肥厚性瘢痕やケロイドになってしまうとこの期間はさらに伸びることが考えられます。
産後のママをサポートしてくれるサービスはたくさんあります。無理をせず活用してみましょう。
帝王切開の傷は決してお腹だけではありません。一人で抱え込まないようにできると良いですね。